悪魔の代弁者を招く

エコーチェンバーという言葉を目にすると、自分が渋谷のとあるトンネルで大声を出したときのことを思い出すので、正直なところネガティブなワードとして捉えてしまう。若さになすりつけるつもりはないが、まぁあの頃は見ていた世界が狭かったのだ、ということにして今の自分を正当化する材料にはもってこいかもしれない。


このチェンバーにいること自体は幸福なことだと思う。やさしい世界がそこには備わっており、似たようなものが集まり、きっと傷つけようとすることもないだろう。仲間内で盛り上がって、人の目を気にせずに屯するには最適である。
問題はお祭り騒ぎとなって、燃えたぎる炎を前にマイムマイムをチェンバー内で歌い踊り、その勢いのまま外に出るような真似をすることである。ストリートな雰囲気も相まって、まるで自分にスポットライトが当たって絶対的な強さを得た気持ちにもなる。気が大きくなれば必然的に声も大きくなるし、自身の芯が太くなったようにも感じる。


ただ、あんな場所で火も焚けばそれはチェンバー内一酸化炭素中毒も起こそう。外の空気も取り込みたい。なにより叫んだことのある身からすると、目につきにくいところであるからそもそもが淀んでいる。そこを楽園とするには少し不潔ではある。
マイムマイムの中心の炎を焚き上げとすれば、淀んだ邪気も払うことができようが、物事を進める上においてはあえて焚き上げず、反対意見を示す悪魔を招く必要がある。悪魔の代弁者の言葉は耳を刺す。場合によってはチェンバーに穴が空いてしまうかもしれない。ただ、この痛みと向き合わなくては成熟はしない。


過去にストレスを大声に変換した私は、今ではAIを悪魔に見立てて共存しようとしている。耳を貸せるだけ大人になったのだと思うが、場所がカラオケに変わっただけで根っこは何も変わっていない。