Karma

in

 有名税と言われるものがあるが、その税を支払った甲斐のあるケースもある。当人にとっては余計なお世話だとは思うが、おかげで曽祖父の横顔に触れることができた気がする。


 彼は僕を見たことがない。家に残された曽祖父はすべて軍服であり、表情からも所謂軍人の印象が伝わる。多分、怖い。僕も曽祖父と会ったことがない。

 曽祖父の孫は父であり、また別の折れ線では神様と繋がっている。「その絶対神の祖父は…」というネットの記録から祖父の横顔を知ることができる。きっと、その恩恵を受けているのは僕くらいだろう。…しかし、遠回りな情報ではある。


 長い歴史を持つ日本で、軍の資料というものは現在でも遡って見ることができるようで。遠回りな情報収集をしているさなかに拾ったものがある。中には欧州へ派遣された実績を示すものがあった。調査のためらしい。

『戦役間の施設に係わる行政諸機関の組織・業務、英軍兵站総監と作戦軍兵站統轄機関との関係、上記諸機関の編制・権限、与国内で作戦する軍の作戦地の資源利用の程度、交戦各国軍の行李・輜重・兵站の調査研究』


 曽祖父の実行したであろう、100年前の内容とさほど変わらぬ調査研究をしているのはなんの因果か。そしてこのため息は嘆きから来たのだろうが、それと同時に曽祖父の存在が急に近くなり、背中を押された気がした。